創作天文台
文章の二次創作を中心としてオールマイティーに。現在リリカルなのはの二次創作を連載中。極々普通にリンクフリー。
Entries
魔法少年ロジカルなのは5-7(1)
「きりーつ。さよーなら」「「さよーなら」」私立聖祥大付属小学校、3年1組。アリサ、すずか、そしてなのはの3人が所属することで学年の中でも有名なこのクラスは、たった今帰りの会を終えたところだった。他の教室ではまだ連絡事項を伝えていたり、プリントを配布したりしている。帰りの会をいかに早く終わらせるかはそのクラスのまとまり具合で決まるものだが、3年1組は特に早くも遅くもなく中間点をうろちょろしているのが常だ...
魔法少年ロジカルなのは5-6(3)
さっきから笛のようなものがうるさいと思えば、それは自分の喉だった。無意識のうちに息があがっている。この身体で鞭を振ればこうなることは分かっているのだが、あの偽者のあまりの不出来に我を忘れてしまった。失敗作だと分かってはいたが改めて見せ付けられると、まるで存在自体がこちらをあざ笑っているかのように思えてしまう。「ヒ……ュ……ヒィ……」プレシアは壁に手をつき服の中に備えておいた試験管を取り出した。最近はもう...
魔法少年ロジカルなのは5-6(2)
次元空間航行艦船が発明から現在のレベルにまで到達する過程には当然いくつかの段階があり、数多くの副産物を世に送り出した。そのうちの1つが移動庭園である。移動といっても速度は鈍足極まりなく言い訳程度の代物だが、燃料などの補給を必要とする艦船と違い半永久的に次元空間で活動することができる。その特性から今は居住性を追求した庭園が金持ちの別荘などとしていくつも稼動している。だがプレシア・テスタロッサが保有す...
魔法少年ロジカルなのは5-6(1)
同時刻、という前置きは意味を成さないかもしれない。どの空間にも属さず、世界を惑星とすればそこは宇宙だった。基準となるものが元から何一つとして存在しない異空間では時間など意味を成さないのだ。だがあえて人々がこの空間に自ら持ち込んだ時間という概念を用いるならば、今はフェイトが転移魔法を使用してから少したった頃と言える。そんな荒涼とした空間の中を一隻の艦が悠然と進んでいる。艦腹に描かれた艦名は『Arthra(...
魔法少年ロジカルなのは5-5(5)
「お土産はこれでよし、と……」「それにしてもなんだったんだろうね、あれ」「……わからない」マンションの屋上で二人は帰還準備を進めていた。準備と言っても魔法陣などは最初から完成しているので、次元接続が安定するのを待っているだけなのだが。日はもう沈みかけ、空の色は夕方から夜に変わっている。間の境界線は淡い紫色で、あれが地平の彼方まで移動した時にはもう夜なのだろう。自然の色彩に目を細めながら、あの喫茶店で起...
魔法少年ロジカルなのは5-5(4)
「わ、私達はそろそろ帰りますから……」「あ、ちょっと!?」アルフが今更な丁寧言葉で断りをいれ、フェイトの手を引っ張って席を立たせる。止めに入るアリサを無理やり作った笑顔で受け流し出口に向かって歩き出す。しかしフェイトは何かを思い出したように立ち止まり、方向転換してカウンターにいる桃子の下に駆け寄った。「あの、私たちもう帰るんですけど」「あらそう? ゆっくりしていけばいいのに」「うちに帰らないといけな...
魔法少年ロジカルなのは5-5(3)
「知り合いなんてもんじゃないだろ」「!?」なのはにとって致命的とも言える発言をしたのは、仕返しだと言わんばかりに意地の悪く笑っているアルフだった。なぜ知り合いなんて名乗らせたかは知らないが、なのはの思い通りなることは気に入らない。単純だったがアルフにとっては十分な理由だ。そしてなのはを困らせたいというアルフの願いはこれ以上ないほど即刻に、かつ全力で叶えられた。カチャ。すずかのカップが初めて小さな音...
魔法少年ロジカルなのは5-5(2)
「それで、」レモンティーでこくりと一口喉を潤したアリサが話を切りだす。「あなた、名前は?」その口調はさながら琵琶湖の如く穏やかで、いかにも私は冷静です的な印象を持たせる。実のところ心の天気がかなりの荒れ模様だと気付けるのは付き合いが長いなのはやすずかぐらいな物だろう。名を訊ねられたフェイトは「えと、あの」と言葉に詰まって隣に座るアルフに助けを求めたが、彼女はなのはへの敵対心をむき出しにしてじーっと...
魔法少年ロジカルなのは5-5(1)
「フェイト? ケーキ来てるよ、早く食べよ……う……」トレーを持ったまま固まっているなのはを見ると、アルフは顔を歪めて犬歯をむき出しにした。「あんたっ……!」「なんで、ここに……」フェイトは信じられないという顔をして呟いたが、それはなのはのセリフだった。ここにいるはずがないのはフェイト達だ。レイジングハートを掴もうとポケットの中に手を伸ばしかけたが、ここで戦うわけには行かないと思いとどまる。(フェイト、早く...
魔法少年ロジカルなのは5-3(4)
「ねえ、帰りに翠屋に寄ろうと思うんだけど」「あ、いいわねそれ」これだけの会話でなぜかなのはの同行も決定してしまうのは、もうどうしようもないことだと悟っている。いつも全く違和感なく2人と一緒に行動し、時間がたった後にちょっと待てよと思うのだ。別に話を振られてもいないのに一緒に行く必要はないだろうと。しかしいつの間にか3人一緒にいることが一番心地よくなってしまったのだから、もうこの2人から離れることはで...
魔法少年ロジカルなのは5-4(3)
「あの人がお土産なんてほしがるかねぇ」「わかんないけど……こういうのは気持ちじゃないかな」善は急げと早速行動を開始したフェイトと、彼女に引っ張られたアルフの2人は、並んで小さな通りを歩いていた。昨晩戦場にした街の中心からは少し離れている場所だだ。周りにはそれほど高いビルもなく、数km離れているはずのフェイトの仮住まいのマンションがはっきり見える。人通りもほとんどなく、夕方の散歩を楽しむ犬とその飼い主が...
魔法少年ロジカルなのは5-4(2)
「どうだい? まだ痛む?」「昨日よりは全然……だけど少しひりひりするかな」白いパジャマ姿のフェイトから話を聞きながら、ベッドに半分腰掛けたアルフはゆっくりとフェイトの右手に巻いた包帯を解いていく。現れた素肌は薄皮が張っているだけでまだまだ直りかけといった感じだ。たった一晩でここまで回復するのはさすが魔法の力なのだが、完治にはあと半日は必要だろう。「報告は夕方にしたほうがいいね。その頃には治りきってる...
魔法少年ロジカルなのは5-4(1)
ランニングを終えた美由紀がいつもの練習をこなすために道場の引き戸を開けると、短刀を模した木刀を握って佇むなのはの姿があった。道場の中の空気はしんと静まり、まるで真冬のように肌が痛む。「あれ、なのは?」「あ、お姉ちゃん」なのはが美由紀に気付くと張りつめていた空気は一挙に緩んだ。「どうしたの? すっごい早起きさんだ」「あはは、うん、ちょっと目が覚めちゃって」「そうなんだ。なのはってあんまり朝の鍛錬しな...