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魔法少年ロジカルなのは5-1(2)

「アリサちゃん、一緒にご飯食べ……」
「行こう、すずか」

にべもなくアリサは立ち上がり教室を出て行った。1人残されたなのはのそばにすずかが近寄る。

「すっかり怒っちゃってるね」
「うぅ……」

朝からずっとこんな調子だった。いつものバス通学ではなく車で別々に登校したことから始まり、授業中目を合わせても無視、休み時間話しかけても無視。今までけんかは何度もしてきたが、いつもアリサの側からケンカを初め、アリサの側から仲直りするという構図だった。これほど徹底的に拒絶されるのは初めての経験だ。

「やっぱり旅館でアリサちゃんを押し倒し……」
「だから誤解だってばぁ!」

アリサを襲って泣かせたと誤解を受けたなのはは、あの後それはもう筆舌に尽くし難い責め苦を受けながらもなんとかすずかの誤解を解いた。しかし布団にアリサが入ってきたところまでは自分は無実だと胸を張れたのだが、感情のままにアリサを押し倒した(あくまで押し倒した”だけ”だ)のは事実であるので強く言うことができず、すずかの疑念はまだ晴れていなかった。

「じゃあなんでアリサちゃんとケンカしたのか教えてくれる?」
「そ、それは……その……」

親友として何かできないかと言われて、それを拒絶したから。
アリサと同じく親友であるすずかに、そうはっきりとは言いにくかった。

「……とりあえずアリサちゃんもやりすぎだと思うけど。ちょっと話してくるね」
「うん、お願い。私が行っても余計にこじれるだけだろうし」

冷静に受け止めながらもやはり少しだけ落ち込んでいる様子のなのはを気にかけながら、すずかはアリサを追って教室を出た。
校舎はさして広いわけではなく、こんなときアリサが行きそうな場所と言えばなおさら限られている。すずかは少しも迷わず、まっすぐに校舎の真ん中にある階段の踊り場に走った。
はたしてそこには俯き加減で階段に座り込むアリサの姿があった。

「なによ」

すずかが追いかけてくるのが分かっていたかのように、先にアリサが口を開く。

「なんで怒ってるのかなんとなくわかるけど、だめだよ、あんまり怒っちゃ」
「だってむかつくわ! 悩んでんの見え見えじゃない! 迷ってるの、困ってるの見え見えじゃない! なのに何度聞いても私達にはなにも教えてくれない!! それに、それにすずかだって聞いたでしょ!? あいつ、私たちの助けなんかいらないって言った!!」
「……バレてたんだ」

あの旅館での夜のこと。なのはが最近おかしな態度をとる理由を聞き出そうとしたのは2人で考えたことだった。2人よりも1人のほうが打ち明けやすいのではないかと考えて、問い詰める役こそじゃんけんで勝ったアリサに譲ることになったのだが、すずかは最初から最後まで聞き耳を立てていた。

「すずかは悔しくないの!? 私たちはなのはが必要なのに、なのはは私たちが必要じゃないなんて!!」
「それは確かに少し……ううん、すごくショックだったよ。つらい事ことも楽しいことも分け合えてるって思ってたのに、結局なのはちゃんだけ、つらいことを1人で背負ってたんだから」

それは対等な親友ではない。自分達がなのはに依存しているだけだ。これでは申し訳ない気持ちが先にたって、素直に感謝することができない。

「……こんな気持ち、やだ」
「私もだよ。だけどなのはちゃんが秘密にしてることを無理やり手伝っても、かえって邪魔になるかもしれない。だったら私たちは待ってるだけしかできないんじゃないかな」
「分かってるわよそんなこと!!!」

アリサが廊下中に響くような大声を上げて立ち上がった。
涙で目が赤くなり、鼻水がたれて、とても人の前には出られないようなひどい顔だ。

「だからそれがむかつくの! 少しは役に立ってあげたいのよ! どんなにつまらないことだっていいんだから!! 何にもできないかもしれないけど、話してくれれば少なくとも一緒に悩んであげられると思ったのに!! なのになんで……なんでなにも話してくれないのよぉ……」
「アリサちゃん……」
「自分を必要としてくれなかったからって叩いて、余計になのはを悩ませて……これじゃ私……バカみたいじゃない……」

親友の役に立てないことが悔しくて涙を流すその姿が微笑ましく、そして悲しくて、すずかはアリサを抱きしめた。

「ふふ やっぱりアリサちゃんもなのはちゃんのこと好きなんだよね」
「そ、そんなのあたりまえじゃな……!!」

そこまで口走ってアリサは自分がとんでもないことを言っていることに気付いた。掌で口を押さえつけるが、一度言った言葉を封じ込められるはずが無い。
隠蔽をあきらめたアリサは羞恥に染まった顔を恨みありげにゆがめてすずかを睨んだ。

「ハメたわね……」
「ふふ」



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4件のコメント

[C138] 返信

>館長さん、お疲れ様です。
熱さとやる気の減退が最悪の敵です。

>あれ?ユーノがずっとマトモなんて・・・今回は一体何の冗談ですか?(マテ
>月齢や潮の干潮満潮みたいに周期があるって事ですかね(酷)
たまにはまともにもなりますw

>それはともかく・・・なのはとレイジングハートの間にユーノには無い、確固たる信頼、「友情」を感じました。
>相棒)レイジングハート≧マイPC>>>>>>>リボD>シュークリーム>コーンポタージュ>目潰し>遮蔽物>…(あと適当)…>ユーノ(カス
>なのはにとっての価値観で言ったらこんな感じになりますか?ちなみに「使える道具」ランキングなので大切な人は除外です。
ひでえwww けど実際そんなもんだからもっと悲惨www

>今回は第一回なので、今後どう動くのか予測も出来ませんが…フェイト生き残れるのかな?
今回辺りできっちりフラグを立てる……まえに地球を貫通している溝を埋めて土台を作らないとマズイので、そんな展開です。多分。
  • 2006-08-04
  • 投稿者 : 館長
  • URL
  • 編集

[C139] ツンデレツンデレ!!!

さて、テストを全部すっぽかしたのがバレると母君に絞め殺されそうなユキですw(挨拶

現在、実家に帰ってるわけですが、ノートPC着くのマジオソス。漸くきたよー。つーわけでこれからここを筆頭とした巡回サイトを廻るわけです。

アリサの スルーこうげき!
なのはは せいしんに 84のダメージをうけた!
守りたいと思うなのはと、一緒に隣り合って歩いていきたいアリサとすずか。
そーいうすれ違いからですかね。

待ってることしか出来ない女は辛いのよ? と言われた気がする今回。なのはを信じて帰りを待ってたら、フラグの立ったフェイトってライバルが出てきて一騒動、何てイメージが湧いて来たw
嫉妬心全開になりそうな展開www
やばいwそういう展開とかになったらウレシスwww

アリサの感情暴露。思い余って「当たり前」とまで言うアリサに7モエスw アリサが何でそんな事分かるのよ→すずかが分かるよ。だって私も好きだもの、とかに夢想w (・∀・)イイ!! よ(・∀・)イイ!! よ!!

んー。シリアスだったからテンション上げて変な感想書けなかったよ(⊃д`)
まーこれからに更なる期待がかかりますねw
それでは無理の無いように頑張ってください。

ノシノシ
  • 2006-08-04
  • 投稿者 : ユキ
  • URL
  • 編集

[C140] 「ふふ やっぱりアリサちゃんもなのはちゃんのこと好きなんだよね」

アリサちゃん「も」……( ゚д゚)ポカーン

あれれ、すずかの発言に関してはスルーですかアリサさん?
  • 2006-08-05
  • 投稿者 : 通りすがる
  • URL
  • 編集

[C141] すずか 暗躍

 館長さん、こんにちは
 すずか…あの時起きていたんだ(笑)。
 つまり、なのはが急所攻撃受けた時に一人聞き耳立てて「悶えて」いたと? あの時のすずかの声って「寝言」じゃなかったんですね(笑)。

 冷戦状態のなのはとアリサ、そして仲をとりもつように見えながらきっちりアリサ側なすずか…なのは側の情報がアリサにだだ漏れ状態であります。 情報戦で大幅に遅れをとっている以上、なのはに勝ち目ないです。
 それにしても、あちこちで恋愛・フラグ乱発してますね…もしや、ハーレム・ルートッ!?

 なのはとフェイトの溝を埋める…つまりフェイトがなのはの手に堕ちるんですね!!(マテ
 なのはに破れ、囚われの身となるフェイト…そんな彼女を助けるべく満身創痍のアルフが立ち上がる!!
 …あれ? どっちが主役?
  • 2006-08-05
  • 投稿者 : 福茶
  • URL
  • 編集

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