魔法少年ロジカルなのは8-3(3)

そうしてなのはが眠りと覚醒の狭間で漂っている間にもユーノは黙々とねこまんまの山を削っていた。しゃべることもなく1人での食事となればおのずとスピードは上がる。やがて皿の上のねこまんま消えユーノの胃袋も満たされた。

（ごちそうさま。なのは、この皿はどうすれば……なのは？）
「……」

ユーノは返事をしないなのはを遠巻きに眺めていたが、いつまで経っても身動き一つとらないので接近してみた。理由もなく緊張したが、特に問題もなくベットの下までたどり着き、それでも反応がなかったのでベットの上に飛び乗ってみる。

（……寝てるの？）
「クー……？」

返事がない。ただのあどけない天使のようだ。
くーくーと穏やかな寝息を立てるなのはは年相応か、それ以上に子どもっぽい寝顔を見せていた。あのなのはがこんな無防備な姿を晒すなど、やはり度重なる戦闘でかなり疲れていたんだろう。

（これが、あのなのは……）
「くー……」

なんというか、なのはが自分と同い年だということを改めて感じさせられる。というかコレが初めてじゃないだろうか。
あまりに安らかな寝顔。物珍しさも手伝ってなかなか目がそらせない。

（……）
「くー……」
（……和むな、これ）

普段ないがしろに扱われて荒んでいた心が癒されていくのを感じた。ナノハテラピーとでも名付けようか、などという緩みまくったアイディアが浮かんで来てしまうほどだ。

（それにしてもちょっと寒いな。何も掛けないで寝るのは体に悪いだろうし）

なのはなら極寒の地だろうと灼熱の砂漠だろうと軽くサバイヴしてしまいそうだが、この安らかな寝顔を保つためなら多少の努力はいとうべきではないだろう。
ユーノはベットから降り変身を解くと、ベットの上にたたまれてた毛布をそっとかける。

「うみ……にゅう……」

意味不明だが可愛さ溢れる声を漏らしながら身じろぎし、なのはは薄く目を開けた。

「あ、起こしちゃった？　毛布を掛けようと思ったんだけど……」
「ん……そっか。ありがとね」

なのはは上半身を起こして右手で目頭を抑えた。

「寝ちゃってたか……だめだな、かなり疲れてるみたいだ」
「あれだけ戦い続ければ当然だよ。魔力だってなくなってるんだし」
「とは言ってもまだ９時前だし……ああもう、だめだ。このまま寝ちゃお」

ばふっと倒れ込んで肩まで毛布を引き上げる。怒濤の勢いで睡魔が意識を席巻していく。再びなのはが寝息を立て始めるまで一秒もかからなかった。

「……くー」
「……もう寝ちゃった」

感嘆すら抱いてしまうほどの早業だった。ユーノは苦笑しながら乱れた毛布を整えて、なのはが右手に携帯を握っているのに目がいった。
意識がなくなっても親友二人を気にしてるんなんだろうなと察する。親友を大事にするその姿勢は当然ユーノも共感できたし、なのはが友達思いの優しい人間である証明ともとれた。敵と認識した者に対する苛烈さはその裏返しなのだ。
だがそのあまりの執着には―――少しだけだが、違和感を覚えるのもまた事実だった。