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魔法少年ロジカルなのは1-3

ほんでもって第三弾。




グゥゥゥゥ……

物騒なことこの上ないうなり声を上げる黒い獣を前に、ユーノは混乱していた。

(お、男!?)
「……君も間違えてたのか……」

なのはは毎度のこととは言え、落胆せずにはいられなかった。

(だってその服は、その人の深層心理にある服のイメージが反映されるんだよ!?)

ユーノの言葉をうけて、なのははあることに思い当たった。

母の教育、という名の洗脳。

昔からずっとスカートが当然のように教育され、入学当初までは制服も女子のものを着ると思いこませられたなのはだ。
今でも服を選ぶ時に女物に目が行ってしまう事を鑑みるに、なのはの深層心理に正装=女子の制服という計算式があっても不思議はなかった。

「……まぁ、いいじゃない」

もう説明するのも鬱だ。なのははユーノの追求を避けた。

「次はどうすればいいの?」
(セットアップが成功したからレイジングハートは使えると思うけど……)

なのははやっと右手に握っていたレイジングハートの偉容に気付いた。
ついさっきまで女子制服のショックが強すぎてすっかり無視していたが、レイジングハート元がビー玉大の宝石とは到底思えない形に変貌していた。
1m程度の棒状の物体に三日月型の物体がくっついているような形で、その中心には変形前のレイジングハートが巨大化したような赤色の球体が位置している。
全体的に鋭角的なデザインは、杖というよりはまるでSF映画に出てくる銃か何かのようだった。
これならば確かに、呪文が必要ないという言葉も理解できる。
なかなかに頼もしい。なのははレイジングハートを握りしめ、

「じゃあ、あれと戦えって言うんだね?」

今にも飛びかかってきそうな黒い獣を正面から見据えた。
殺気がまるで冷たい風のようになのはの頬を撫でる。僅かに、背筋に冷たいものが走った。普通の小学三年生だったら確実に腰を抜かしている。

「でも、兄さんの方が強い」

父の方は、言わずもがな。
時々行う真剣勝負でぶつけられる闘気は、こんなに生やさしいものではなかった。初めてのときはあまりのすごさに気絶してしまったくらいだ。

「確か……思い浮かべれば自動的に呪文が作られる、って言ってたよね?」
(うん、そうなんだけど……)
「分かった。やってみる!」
(ちょ、ちょっと待ってなのは。君が男の子ならまずいことになるかも……)

なのはにユーノの忠告が届くことはなかった。黒い獣がその巨体に似合わない素早い動きで飛びかかってきたのだ。
もはや余計なことにかまっているヒマはなかった。コンマ一秒すら惜しい。

(防御……防御……防御!)

なのはの頭の中はその言葉で満たされた。
レイジングハートにその思考が伝わるように、効果はあるかどうかわからなかったが握りしめる力を増す。

『protection.』
「……やった!?」

電子的な音声に合わせるように中央の球体に英単語が浮かび上がった。英語は数学に次ぐなのはの得意分野だ。その意味も当然理解できる。

protection.それ則ち、保護、擁護、庇護だ。

なのはの正面に突然桃色の円陣が浮かび上がった
やたら電子的な杖に比べて、その円陣はファンタジーでよく見かける、昔ながらの魔法陣だ。

「グォオオオオァ!!」

その向こうからまがまがしい叫び声を上げ、黒い獣が突進してくる姿が見えた。
普段なら避けておくところだが、なのはは防御の魔法に少なからず期待していた。
もし破れるにせよ、獣の速度を止めることぐらいは可能だろう。万一の場合はその瞬間に回避する算段だ。

ビー!

「へ?」

だから、唐突にそんな音が聞こえてきた時は、なのはは自分の耳を疑った。

『sistem error.sistem error.sex is wrong』

無機質に伝えてくる電子音声。なのははフリーズしかけた頭の中で、その意味を訳した。
曰く『システムエラー。性別が間違っています』。
そして展開していた魔法陣はあっさりと消え去り、バリアジャケットは霧散した。

「……あれ?」
(なのは、避けて!)

ユーノの声が黒い獣よりも早くなのはにたどり着いたのは、それが空気を媒介にしていなかったからだ。
もし通常の声帯を使って声を発していたならば、黒い獣の身体がなのはを吹き飛ばすよりも僅かに遅れていただろう。
だがそんな刹那の差など、あったところで意味は無かった。
なのはに回避する暇などない。小さな身体は黒い獣の巨体の運動エネルギーを存分に受け取った。

「へぶっ!」
(な、なのは!?)

まるでかわきりの石のように地面を二度三度掠ってなお飛び続けたなのはは、ぐるぐると回転しながら地面を抉り土を巻き上げる。
空中七回転捻りという新記録をうち立てて、生えていた木の幹にモロにぶつかることによってやっと停止した。勢い余って生命活動まで停止しそうだ。

「いたた……ってほど気、楽で、も無、い、かな……」
(大丈夫!?)
「だいじょばない……背骨が……アリサちゃんに蹴られた首が……」

ぴくぴくと痙攣するなのはに、ユーノは急いで駆け寄った。

「どういう、事? 冗談とか言ったら、この場で殺すよ?」

なのはは頬を引きつらせ、怒りを露わにしてユーノを問いつめる。
時代錯誤の古流武術の修行を受けていなければ、間違いなく全身粉砕骨折で火星人の仲間入り果たしただろう。

(やっぱり……レイジングハートが誤認してたんだ)

ユーノはなのはの傍に転がる、ガラス玉に戻ったレイジングハートを指した。

「誤認?」
(性別だよ。インテリジェントデバイスの場合、魔術師とのシンクロがより重要だから、女性と男性では微妙にシステム構成を変えるんだ。レイジングハートはなのはのことを女の子だと判断してたから、システムエラーを起こしたんだ。容姿とか思考とか、そういう面で判断するからこういう事は滅多に起こらないんだけど……)
「……その滅多が起こった、ってことだよね」
(そう……なるね)
「……」
(……)

なのはは無言でよろよろと立ち上がると、転がっていたレイジングハートを拾い上げた。
そしてそれを振り上げ、地面に――

(うわー! なのは、何するつもりなの!?)
「離して! まさかAIにまで性別を間違えられるなんて……このビー玉だけは許さない!!」

ユーノはなのはの手に上り、レイジングハートを必死で押さえつける。
なのはは目の端に涙さえ浮かべながら、ユーノをふりほどかんとぶんぶん腕を振り回した。

「ウグゥァアアアア!!」
(な、なのは! まずはジュエルシードを封印しないと! もう一回変身して! いまレイジングハートがシステムを再構築したから、今度は大丈夫なはずだ!)
「っ……今度こそ大丈夫なんだよね?」
(ああ。だけど出力は40%ぐらいしかでない。防御魔法とか攻撃魔法は使えないから、一気に封印するしか……)
「上等だよ……私がか弱い女の子じゃないってところ、見せてやる!」

なのははレイジングハートをぽいとユーノに投げ渡し、変わりに近くに落ちていた木の枝を拾った。さっきなのはが激突したとき、衝撃で落ちたのだろう。
本当だったら道場に置いてある鉄骨木刀が、更に真剣なんてあれば最高なのだが、生憎とこういう緊急事態に限ってなのはの手元にはなかった。
だがそれは大した問題ではない。

兄である恭也はなのはに武術を教える時、武器を選ぶなとアドバイスしていた。
恭也が学んだ武術は主に剣と鋼糸鉄線を組み合わせる戦闘術だったが、なのはの先天的な体術の才能を見抜いた恭也は、素手での戦闘を基本として修行させたのだ。

それ故になのはは得物を選ばなかった。
例えそれが生乾きの枝であっても、ただ自分の身体のみであっても。

(なのは、そんな枝で何を……)

引けない訳もあった。
私は無関係とか、他人なんてどうでも良いとか、そういう思想はなのはの中に未だ根強く残っていたが、今はなのは自身の命がかかっているのだ。

せっかく”自分の身を守るため”に身につけた力だ。今使わないで何時使うと言うのか。

「グッォオオオオ!!」

飛びかかってきた黒い獣に、持っている枝を構える。
さっきのような無様なまねはするつもりはなかった。なるほど黒い獣のパワーは相当の物だが、スピードはてんで低レベルだ。
ならばなのはがそれを受けてやる道理など無い。

「……っし!」

ぎりぎりで黒い獣のタックルをかわしたなのはは、すれ違いざまに枝を突きだした。
獣の外皮に枝はあえなく先端からつぶれていったが、獣自身のスピードもあって相打ちの形で皮を貫くことに成功していた。
なのははその枝に思い切り蹴りを加える。肉を割く確かな感覚と共に、枝は獣の中に飲み込まれた。
しかし獣は低く呻くだけで、これといったダメージがあるようには思えない。通常の動物ならばこの時点で勝負はついているのだが。

「駄目か……」

当然と言えば当然だった。内蔵がある生身の動物には効果的な攻撃だが、黒い獣はあくまで獣の形を取っているだけの思念体であり、そのがらんどうの体内に枝を押し込んだところで効果は無い。
しかし、なのはの表情に落胆の色は皆無。もとよりこの程度で決着が付くとは思っていなかった。

「……点が駄目なら」

今度はなのはから踏み出した。まるで地面の方が縮んだような錯覚を受ける程のスピードで、なのはは一瞬にして黒い獣の懐に飛び込む。獣はもちろんとして、結果的に傍観することとなったユーノでさえその動きを見極めることは出来なかった。
獣の体の表面に両手の平を重ねる。

「面で撃つ!!」

ドヅン、というまるで大砲の発射のような音が鳴り響き、黒い獣はその巨体で先のなのはと同じ目に遭った。もっともなのはと質量がまるで違うので、十数本の木を薙ぎ倒すことになったが。

(な、なのは?)
「ふぅ……あとは封印だっけ?」
(そ、そうだけど……そんなことよりもなのは、今のは一体何!?)
「ああさっきの? ちょっと武術をやってるんだ。名前は忘れたけど、なんか昔から洗練してきた実用重視の古武術なんだって」
(ちょっと、って……)

なのはの様な小柄な身体で、下手をすればトンの大台に乗る巨体を吹き飛ばす様は、とても”ちょっと”には見えなかった。
平行世界には魔法を使わなくても信じられないほどの戦闘能力を持った人間が星の数ほど存在するが、その中でもなのははかなり上のレベルだ。なのはの才能も大きいだろうが、とても一人でたどり着けるような強さではない。かなり特殊な教育の影が見え隠れしていた。
ユーノの思考はなのはに対する疑問で埋め尽くされたが、薙ぎ倒された木々の向こうで呻き始めた獣に、現実を見直した。

(もう再起動は終わってる。さっきと同じことをすればいい)

ユーノはなのはの様にレイジングハートを投げることは出来ず、足元まで駆け寄る。
小さなユーノの両手からレイジングハートを受け取り、なのはは呪文を唱え始めた。

「我、使命を受けし者なり。契約の下、その力を解き放て。風は空に、星は天に。不屈の心はこの胸に。この手に魔法を。レイジングハート・セットアップ!!」

もともと記憶力はいい方だ。詠唱はよどみなく、ついさっきまで魔法の魔の字も知らなかった初心者とは思えないほど円滑に、なのはは再び光に包まれた。




「……で」




変身を終えたなのはは、ユーノを見下ろす。




「なんでまたこの服なの!?」




叫びながら、なのははスカートの両端をつまみ上げた。
なのはの身を包んだバリアジャケットは、ついさっきの変身と寸分と変わりないものだった。

(そんなこと言っても……レイジングハートが再設定したのはなのはの性別だけで、なのはの服はもうそれで登録されちゃってるよ。バリアジャケットまで再構成するとなると、すごく時間がかかるんだ)
「じゃあさっき私が見せた肉体派の戦闘は!? なにか思うところはなかったの!? こう、この服じゃ似合わないなとか!!」
(ああ、そういうつもりだったんだ……でもまぁいいじゃない。なのはの身体能力だったらバリアジャケットがどんなのでも、あんまり関係ないし)
「私の気持ちの問題なの! ちょっとレイジングハート、なんとかしてよ!!」
『...no problem』

レイジングハートは律儀に返答した。
戦闘を基本として人格形成がされているレイジングハートにとって、なのはの一連の会話は全く理解不能だったが、とりあえずそれっぽいフォローをしてみる。
レイジングハートとしては、とりあえず目の前の脅威を排除もせずに時間を無駄遣いして欲しくなかった。いつ黒い獣が復活するとも限らないのだ。
そしてその予想は見事に的中した。

「だから大いに問題があるんだってば!」
(そんなこと言っても……なのは、危ない!)
『protection.』

復活した獣が再び突撃を行ってきた。レイジングハートはギリギリで反応し、無理矢理物理シールドを展開する。
システムが酷く乱れていたためシールドはすぐに限界を迎えたが、なのはが安全圏まで移動する時間は十分に稼いだ。

「あれを喰らってもう復活するの?」
(ジュエルシードの暴走体は魔法で攻撃しないかぎり効果はでないよ。だから早く封印すれば良かったのに……)
「べ、別に今からでも大丈夫だよ。レイジングハート、ジュエル……シードだっけ? とにかくそれを封印して!」
『sealing.receipt number XXI.』
「よーし、それじゃあ……きゃあ!!」

レイジングハートを起動し構えた所まではよかったが、肝心の獣が攻撃の手を緩めようとしなかった。
攻撃といっても相変わらずただの突進のため回避には成功したが、封印のシークエンスは中途終了してしまった。

(っていうか今『きゃあ』って……)
「そっか、まずは動きを止めないとね」

再び顔を覗かせた母の洗脳行為の成果にユーノが突っ込んだが、なのははプロサッカー選手並みのスルーを見せた。
この際スカートやらは無視して、突撃をしたまま背中を見せる格好になっている獣に向かって駆ける。

「はぁ!!」

まずは一撃、走った勢いを腰を介して回転の力に変え、中段の回し蹴りを放つ。流れるように一回転、後ろ回し蹴りを追加する。
その華奢な身体からは想像できない威力の打撃に獣が叫び声を上げる。
さっきは吹き飛ばして威力を減らしてしまったが、今度はわざとその場に留まらせて衝撃を無駄なく伝えた。威力は段違いだ。
なのははその背中にレイジングハートを向ける。しかし命令を下すより先に黒い獣が抵抗を始めた。

「グォァアアア!!」

振り向きざまに足か腕か分からない肢をなのはめがけて振り回す。当然、そんなのろまな攻撃を喰らうなのはではない。
紙一重で攻撃をかわすと、臆すことなくもう一歩を踏み出す。

「遅いよ!!」

そして一撃。踏み込むと同時に握りしめた拳を叩き込む。
真っ黒な皮膚が圧力で沈み込む。

「ッガァアアア!!」

もう一本の肢で横から薙ぐが、獣のささやかな抵抗はまたも実を結ぶことはなかった。
その聞くに堪えない叫びはなのはの表情を歪めることには成功したが、それは結果的になのはの気分を悪くして、攻撃の威力を増しただけだった。
しゃがむことによって回避したなのはは、両足を開いて地面を踏みしめ、レイジングハートを持っていない左手で上向きの掌底を打ち込む。
なのはの足が地面にめり込み、獣の身体は真上に数m浮き上がった。空中とあっては流石の黒い獣も身動きがとれない。

決着だ。

「ジュエルシード、封印!」
『sealing.receipt number XXI.』

言葉に応えたレイジングハートが呪文を生成し、封印シークエンスが開始される。
なのはの魔力を吸い上げたレイジングハートは、その先端から桜色の光が発生させ、光はやがて奔流となって黒い獣を飲み込んでいった。

「グガアアァァ……!」

闇そのものだった獣は、光に追いやられる影のように跡形もなく消滅した。

「おわっ……た?」

光の残滓も消え去り、なのはの視界には黒い獣の痕跡として、サファイアのような宝石が浮かんでいるだけだ。
戦いが終わりボーっと立ちつくすなのはに、興奮気味のユーノが駆け寄ってくる。

(やったよ! なのは、成功だ!!)
「う、うん。……あっ」

宝石がレイジングハートの球体に近づき、吸い込まれていく。それは炎の中に海の欠片が沈み込むような幻想的な光景だったが、なのはは素直に綺麗だと思えなかった。
改めて自分が不可思議な事件に巻き込まれたことを実感させられたのだ。
戦いに勝ったとしても、それは非日常に巻き込まれた中の不幸中の幸いに過ぎない。

ちらりと、公園の中央に立つ時計を見る。
この激戦の舞台だっただけあって公園は所々損傷していたが、幸いにもその時計は狂い無く時を刻んでいた。
11時。
とりあえずあの母にいかに言い訳しようか。なのはにとっては黒い獣との戦いよりも、よほどこちらの方が生命の危機であった。









あとがき

とりあえず一日目が終了しました。なのは君、案外強いんですね、これがw でも全然魔法は使えてないという罠。
次回は実体を持った暴走体との戦闘があるわけですが、さて、きちんと魔法は使いこなせるのでしょうか。
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