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魔法少年ロジカルなのは10-3(2)

 なおも話を続けようとするクロノを遮り、なのははよいしょと椅子から立ち上がった。

「お、おい、どこに行くんだ?」
「フェイトちゃんの所。どこにいるの?」
「彼女なら今は隣の部屋で休ませているが……君もあれだけの戦いをしたんだ、少し休んで」
「なんだすぐそこじゃない。様子、見に行ってもいいよね」
「ちょ、ま、待つんだなのは!」

 肩をつかもうとしたクロノの腕をさらりと交わし、なのはは医務室を出ていった。
 置いていかれたクロノは伸ばした手を所在なさげにしているうちに、同じくやることがなくなったユーノと目線が重なる。
 生暖かい空気が流れた。

「……今まではただのへたれフェレットもどきと思っていたが、君も苦労していたんだな」
「前半部分には大いに異論はあるけど分かってくれて嬉しいよ」




―――――――――――――――――――――――――――



 フェイトが休む部屋は歩いて十歩もない。ドアを目前にして、なのははしばしその場にとどまった。
 心の準備が必要なほどではなかったが、表情を崩さないための心構えくらいはしたほうがいい。
 ふっと浅く息を吐き自分のリズムを意識してから足を踏み出す。

プシュッ

 部屋は患者を刺激しないためなのか、金属的なイメージのある他の部屋とは違い、落ち着いた色調で整えられていた。
 なのはは部屋の奥にあるベットに目線を移す。そして思わぬ光景に口をぽかんと開けた。

「……あ」

 やや髪が長い女性局員が驚いた様子でなのはを見ていた。彼女は手に白いタオルを持ち、脇に置かれた洗面器からは湯気が立っていた。なるほど体を拭いていたのだろう。
 誰の?
 そんなもの決まっている。この部屋にはあと一人しかいない。
 フェイトだ。

「ああ、えと、失礼しました」

 意味もなく礼をして回れ右。限りなく走りに近い早足で部屋から出て、壁に寄りかかってずるずる腰を落とす。
 ぺたんと床に座り込んで、なのはは息をしていないことに気づいた。

「う、く……ふぅ」

 いやまてなにをそんなに慌てていると、なのはは自分の頭を軽く壁にぶつけた。
 大げさなくらいの動作で深呼吸する。
 大丈夫。上半身裸とは言っても影になってそんなに見えなかったし。

「いや見えなかったとかじゃない……!」

 胸に手を置いて目を閉じる。無心になれと自分に言い聞かせる。
 しかし暗めの部屋に白磁のような肌は実に栄え、所々に刻まれた痛々しい傷跡は今にも消えてしまいそうな儚さと神秘的な雰囲気を醸し出していた。
 そしてその傷を自分が付けたという事実は、罪悪感と共に心の底の黒い感情をくすぐる背徳的な魅惑を生み、味わったことのない感覚を―――
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8件のコメント

[C1210]

なのはさん…あなた見る以上のことをすでにしているだろうに…w
そしてラスト、やはりドSのようですねw
  • 2009-01-16
  • 投稿者 : かっぱ
  • URL
  • 編集

[C1211] ねいきっど

こわいですよ、なのはさん
でも男の子のなのはさんが好きです
劇場版の情報きませんね
  • 2009-01-16
  • 投稿者 : 名無し鬼畜
  • URL
  • 編集

[C1212] 返信

>ガガギゴさん
>一番槍
>ども、ガガギゴです。
はじめまして。

>不覚にもユーノに笑ったwww
>まあ確かに、彼なら生傷といわず、もっと致命的な重傷だって日常的だよね。
>完全にヨゴレ役なのが、なんというか、あれ、かえってキャラがたっている。
StS編では無限書庫司書兼天才的治療魔導師として登場予定のユーノ君(嘘
彼にとっては粉砕骨折や内臓破裂なんてかすり傷です。

>では。
ノシ



>かっぱさん
>相変わらずユーノへの冷たさに定評があるなのはw
むしろ冷遇に定評のあるユーノ。

>なにやらプレシアが自分から奪いに行くようですが…
>なのはの戦力が落ちたとはいっても、元々フェイトを総合的には超えていて、万全じゃない状態でもドーピングフェイトと渡り合える実力を持っているんだから二戦級とは言いがたいですよねwなのはに阻止されるのか、それとも今までたいした活躍をしていないアースラメンバーが奮闘するのか、続きが楽しみです。
やはり二線級は言い過ぎだったか。それでも今のなのははアルフと良い勝負をしてしまう位弱ってたり。
アースラメンバーは……せめてクロノくらいは活躍させたいですが、いかんせんやられ役が他にいないわけでw



>Naoさん
>ラスボスが自分で出て来ちゃダメっしょ!
>プレシア、体の調子が良くないのに…
ラストに戦えばラスボスですよ!

>Naoです。
さん

>全員消耗している状態で、「大魔導師」プレシアが襲撃してくれば、アースラが阿鼻叫喚の地獄に…
劇中では武装隊員瞬殺でしたからねw
リンディははやてと同じ後方支援タイプだし、対抗できるのはなのはをのぞいてクロノ位なものか。

>「スクライアの砂掘り風情が!」
>「僕だって、やる時はやるんだ!」
>ユーノのバリアは公式でなのはクラスの砲撃もある程度防げるので、身を守りつつ懐に飛び込めば勝てる!?
そしてあの開いた胸元に飛び込むわけですねわかります。

>では。ノシ
ノシ



>ねいきっどさん
>こちらもあけおめことよろ
>惜敗ってところですね
>なのはも二線級ですか
ま、一時的なものですがね。元々なのはの脅威はタフさ、回復能力によるところも大きいし。

>民間人のなのはも10年後、大尉として活躍してますが。22歳のときではなのはは校長をやってることでしょう。フェイトは大尉。はやては准将、シグナムは少佐、リインは少尉ですね。フェイトも少佐ですね。ちなみにファーンコラードは大佐でしょう
そもそもフェイトって階級あるんでしょうかね? 捜査官ですし。警部的な?

>話を変えますが、萌え2次でとんでもない展開が発生しました。ミッドウェイの時点で富嶽が試験運用されたり、1941年末にM26パーシングが完成していて、アフリカ戦線で試験運用とはいえシャーマンよりも早く運用開始したりと紺碧の艦隊と同等以上の展開です
酷すぎるw
富嶽なんて試作すら成功してないのにw




>:さん
>そういえば、来年はハリウッドでアトムをするらしい。ライオン・○ングやアトランテ○スで揉めたしな。あの国、訳分からん訴訟をするくせにやる時は恥もなくする
A.I的な展開ですねわかります。

>最終決戦でロボットがいっぱい出た時は男として嬉しかったのを思いだすな。
>ロボット出るかな!!!(期待大)
何気にいいデザインだった魔導兵。

>そして、プレシアの実力は如何に!?
>では、
ノシ



あああさん
>実はかなり前から見てたけど、ついに耐えられなくなって投稿してしまったwwwwwやはりなのフェはいいです、そしてなのは♂なのがまたすばらしいwwさらに念願のディープktkr
なのフェは俺のジャスティス。

>全く、今後の展開が楽しみでしょうがない、全く。
汚い、流石なのはきたない。
  • 2009-01-17
  • 投稿者 : かんちょう
  • URL
  • 編集

[C1213] ここに書くべきか迷ったんですが

読み返してて気が付いた間違い報告。
第一話1-1ですが、

>それはつまり、社会と算数はバッチリ睡眠していたという証拠でもある。

1時間目 国語ってすずか嬢はお答えになっていたような…。 いつの間に社会に。
(そして、3時間目も社会だというワナ)
  • 2009-01-17
  • 投稿者 : haha
  • URL
  • 編集

[C1214]

>そしてその傷を自分が付けたという事実は、罪悪感と共に心の底の黒い感情をくすぐる背徳的な魅惑を生み、味わったことのない感覚を―――

濃厚なSM調教フラグですね
私は一向に構わんッッッ!!!!
  • 2009-01-17
  • 投稿者 : ナナシ
  • URL
  • 編集

[C1215] 一年ぶりに来て見れば…

ここまで来てしまいましたか…うーん眼福眼福…
『ルーデシア』という、10年後に出てきそうな名前の閉鎖区画研究生成体幼女死体姫のゲームをプレイした後だからとても癒されました…と言いたい所ですが

「不潔!不実!淑女の敵め!」

という『ルーデシア』より、ルーデシア死体姫のお言葉が思い出されたことから、このなのはさんは決定的に何か大切なものを欠損してしまったように思えてちょっと複雑な気分です。
  • 2009-01-19
  • 投稿者 : 氷涙精
  • URL
  • 編集

[C1216]

> そしてその傷を自分が付けたという事実は、罪悪感と共に心の底の黒い感情をくすぐる背徳的な魅惑を生み、味わったことのない感覚を―――
おおぅアリサ、すずかには受っぽかったのになんという。三期での新人達との訓練等も楽しみですね。
  • 2009-01-21
  • 投稿者 : 燦
  • URL
  • 編集

[C1217] りばーしぶる?

なのは、変な方向に覚醒してるんですが…
「…はっ!?ち、違う!違うよ!?」
のたうちまわるなのはの姿が見える…

Naoです。

ところで、英語とかドイツ語とかラテン語で表記すると意味が同じでもかっこよく見えますよね。
管理局をTime-Space Administration Breau、武装隊をTSAB ARMED FORCESみたいに。これは英語(≒ミッドチルダ語?)ですが。

では。ノシ
  • 2009-01-22
  • 投稿者 : Nao
  • URL
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