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魔法少年ロジカルなのは

「さて、と」

なのははそれを見上げた。
心境は魔王の城に挑む勇者、と言ったところか。もっともなのはの足はがくがくと震え、魔王とのパワー差は実に圧倒的なわけだが。
これが魔王の城ならば、なのはの母はさしずめ魔王だろうか。
むしろ魔王の称号の方が名前負けしそうな勢いだ。あの微笑みの後ろに隠れた―――もとい、隠しきれないプレッシャーは尋常ではない。

(なのは、どうかしたの? ここが君の家なんでしょ? 早く入ろうよ)
「ユーノ君はお母さんの恐ろしさを知らないからそんなこと言えるんだよ」
(なのはが怖がる必要なんかあるの? あんなに強いのに)
「強いとかそういうことじゃないんだ」
(……?)
「口では説明しにくいから後で、ね」

なんて言いながらなのはも本音は別だ。出来ればあの恐ろしさなんて二度と見たくない。
というか、巻き込んだ張本人のくせに人の気も知らず、気楽に振る舞っているこのフェレットをさっさと処分したかった。
だがこのフェレットも役に立たないということはなさそうだった。勇者の仲間としては頼りないが、それなりのアイテムの役目は果たす。そんな算段だ。

「多分ばれないとは思うけど……」

どことなくネガティブななのはの言い様だが、別に外出がばれたと確定したわけではなかった。
なのはの家族は全員早寝早起きだし、この時間は皆自室で思い思いの時を過ごしている。
なのはが出かけたのも一時間程度にすぎず、無題外出が発覚している可能性は低かった。低かったが……

「念のため、ね」

何せあの母だ。それだけでなのはの不安は尽きない。

しかしいつまでも外に突っ立っているわけにもいかなかった。
早く中に入らなければ、それだけばれる可能性も上がっていくのだ。
なのはは極力静かにドアノブに手をかけ、急に石のように固まった。

「……」
(な、なに?)
「念には念を入れるよ」

小さくいって、なのははドアノブから離れた。正面玄関から入るのは危険が多すぎる。

「こっちからいく」
(こっちて……何もないじゃないうわっ!?)

ユーノの体を圧迫感が襲った。なのはが突然加速したことでGがかかったのだ。
反射的に目をつぶってしまい、視界は夜を超える漆黒に塗り潰されている。瞼を開けると、そこは屋根の上だった。隣には窓が備え付けられ、ガラスは内側からカーテンに覆われている。

「私の部屋に直接入れば大丈夫。うん、私頭いい!」
(……まるで泥棒だな)
「何か言った?」
(ううん、何でも)

玄関からこの屋根まで数mを跳躍したことは、魔法なしで動いている人間の限界を遙かに超えていたが、黒い獣との戦闘で十分に力を見せつけられたためそうは驚かなかった。
なのはは脱いだ靴を左手に持つと、窓を開けてカーテンを引いた。

「ふぅ……そんなに警戒することもなかったかな」
「おかえり、なのは」
「ただい」



硬直する。
そこにいたのはまさに(描写不可)。



「言い訳はいらないから」
「ちょ、ま」

深夜の住宅街に、なのはの甲高い断末魔が響き渡った。






魔法少年ロジカルなのは。






「そんな理由があるんだったら先に行ってくれれば良かったのに」

問答無用で叩き伏せたのは誰だと小一時間問いつめたいところだったが、なのはの体力は既に会話をするほども残っていなかった。
なのはの悲鳴が生まれる課程で一体何が行われたのかは、まさに筆舌に尽くしがたい。
とりあえずなんだ、はたから見ているだけだったユーノがガタガタ震えて目をつぶり、情報をシャットアウトするほどだったとだけ記しておく。

「それにしても可愛いフェレットね」

なのはの命をかけた説得の結果、ユーノはなのはが拾ってきたフェレットと言うことになった。
窓の外から顔をのぞかせたフェレットを追いかけて、外に出たのだ、と。
事実とは全く関連性のない言い訳ではあったが、効果は抜群であった。もとより動物好きの母はあっけなく陥落して、なのはの魂はかろうじて現世に留まることに成功した。
どうせなら三途の川の向こう側を垣間見る前に制裁を止めて欲しかったが、まぁ、そこまで高望みをするのもなんだろう。

「でもなのは、いくらこの子が心配になったからってこんな夜中に外に出たら危ないじゃない。なのはは可愛いんだから、そこを辺自覚しなさい」
「……わ、かり……まし、た」
「うん、よろしい」

実の母の手によって十分危ないことになっているのだが、これ以上下手なことを言えば真剣に生命の危機だ。

「この子をどうするかは明日決めましょう。もういいから、今日は寝なさい」
「う、ん」
「じゃあね。おやすみ」
「おや、すみな、さい」

ドアが閉まり、部屋の中にはなのはとユーノしかいなくなる。なのははズタボロになった体を起きあがらせた。
体中の関節がきしみ、骨が悲鳴をあげている。それでいて外傷はかすり傷一つないのだから、あの母は人間を超越していると思う。

(……君がお母さんを怖がってた理由が分かったよ)

ユーノは同情全開の視線を向けた。なのははその視線から目をそらす。
挫けるな私、負けるな私。輝く明日はそこにある。
なーんて理想を高く掲げながら、当面の目標は輝かなくても良いから明日を迎えることだったりする。

「もういいや。今日は……もう寝る」
(お疲れさま……って待った待った待った!!)
「ん?」

慌てるユーノに疑問符を浮かべるなのはは、既に上着を脱いだところだった。真っ白な素肌があられもなく晒されている。
そこから醸し出される健康的な色気は、免疫のないユーノには少々毒だった。

(こんなところで着替えないでよ!!)
「何で?」
(何でって……あ、そうか。なのはは男の子だったっけ)
「……はぁ」

なのははこんなやりとりを、過去にクラスメイトと交わしたことがあったのを思い出す。体育の授業で着替えるときにはみんなが顔を赤くしていた。なのはの容姿を考えれば無理もないが、本人とすれば全然納得がいかなかった。
その後なのはは暴走した男子達に女子更衣室に押し込まれ、大混乱の末窓から放り出されたことが記憶に新しい。ちなみに女子更衣室は地上三階だった。
暴挙に走ったのは毎度おなじみのアリサ嬢だが、彼女が将来殺人未遂で逮捕されないか心配だ。

「着替えくらいでいちいち驚かないでよ」
(そ、そうだね……なのは、その傷は?)
「傷? ……ああ、これね」

なのはは体をひねるようにして、背中に刻まれた傷を見た。
純白の肌に一線、二十センチ程度色が違う部分があった。

「昔に大けがしちゃって、その時の」
(大けがって?)
「車にはねられちゃってね。さすがに死ぬかと思った」
(ふ、ふーん)

ユーノは思った。この子、別に僕が巻き込まなくても十分に波瀾万丈じゃないですかい。

(でも……ホントに男の子なんだ)
「だからさっきからそう言ってるでしょ。なにかいけないの?」
(いや、なんていうか……こう、魔法を使うのは少女って決まっているっていうか、日本全国の大きなお友達に喧嘩を売ってるっていうか、夢を壊されて悶絶する人を順調に量産中というか、世界の意志に反してるからもうちょっとで剣で出来た英霊が襲ってくるっていうか)
「何それ?」
(いや、僕にもよく分からないけど)

何を言っていることの興味はあったものの、話のオーラがどことなくくだらなかったので追求は止める。

「さてと」

なのはは青色のパジャマを身につけて、ベットに横になった。
ピンク色のパジャマもあるにはあるが、そこらへんはさすがに男としての絶対防衛ラインを超えている。

「じゃ、おやすみ」
(あ、ちょっとなのは……)
「……く~、く~……」
(早ッ!?)

わずか一秒の早業だった。
ユーノも魔法のことやジュエルシードのこと、今後のこと等を色々話しておきたかったのだが仕方ないと諦める。
それらはまた明日話をすることにして、何気なくなのはの部屋を観察した。

(ずいぶん本と機械が多いんだなぁ……)

というか、本と機械以外にあるのはベットと机くらいであった。決して狭くない部屋の中は、押し込められた機械類の物量によって居住空間が狭まっている。
機械の大部分はコンピューターだった。把握不可能なまでにこんがらがっているコードによって連結された大量の機器類は、全体的な印象で中央に機能を集中しているのが分かる。
ユーノは趣味である程度コンピューターに関する知識があったが、彼の知っているミットチルダ式のコンピューターとこのなのはのそれは大分違った性格だった。

(キーボードとマウスなんて古いインターフェイス使ってる割に、性能は凄い……)

ミットチルダ式のインターフェイスは立体映像と感覚制御で、次元世界の中でも操作性は特化していた。
だが性能となると、この世界のコンピューターの方に軍配が上がる。

(集積回路への詰め込みが凄いのか。それにしてもまぁ、よくもここまで……)

ミットチルダ式は集積回路の詰め込みをある程度のところで諦め、魔法とのハイブリッドによって性能を向上させている。
それに対してこの世界のコンピューターは物理的な性能向上を極めているようだった。
うずたかく積み上げられたハードディスクのタワーを見上げる。

(今度時間があったら、詳しいこと聞いてみよう)

知的好奇心を一度その胸にしまい込み、ユーノは体を丸めて眠りに落ちた。






****************************






(つまりジュエルシードっていうのは魔法における核燃料兼増殖炉みたいな物で、凄い力を持っていて、昨日のアレはその力が実体化したものだ、ってことなんだ。関係ないけど)
(……そうだよ)
(そんな危ない物を、核どころが火もおこせない魔法後進世界に野放しには出来ない。だからユーノ君がやってきた。よく分かったよ。関係ないけど)
(……君の根性は恐ろしくひん曲がってるね)
(ユーノ君からその言葉を聞けるなんて嬉しいな。ありがとう)

胃潰瘍になりかけているユーノである。
なのはは今日最後の授業である英語の授業を受けていた。しかしなのはの頭の中にあるのは異文明の言語ではなく、念話によるユーノの声だけ。
先ほどから説明しているのは今回なのはが事件に巻き込まれるに至った経緯だ。スクライア一族によるジュエルシードの発掘とその四散、ユーノの世界跳躍、なのはとの遭遇、昨晩の戦闘。

(それにしても魔法がそんなに理論的に動いてたなんてびっくりしたなぁ。まるでプログラムなんだもん)
(きょ、興味出た!?)
(戦闘なんてなければ楽しく学べただろうなー。残念だなー)

どこをどう聞いても棒読みだった。

(……どうしてもだめ?)
(だめ)

なのはは非常に頭がいい少年だった。触れたこともないであろう異世界の文明を、今日の一時間目からの説明で理解してしまうのだから。
魔法の基本的なシステムからそれを利用した社会システムに至るまで、この世界との共通点を見いだして効率的に知識に取り込んでいた。さっきの核の例えなど、聞いていたユーノがなるほどと思ってしまった程だ。
そして才能もある。なのはが秘めている魔力は尋常な量ではないし、それは昨晩実戦された。
むしろ驚くべきはその身体能力の高さにあったのだが、そちらも戦闘を有利に運ぶためには有効だ。
だからユーノは頭痛と胃の痛みに耐えながら説得を試みる。

(なのはの才能があればSクラスの魔術師だって夢じゃな)
(普通に学校で勉強できるんだったらそれもいいと思うけど。ともかくその危なっかしい宝石を何とかしたら考えるよ)
(だったら早く解決できるよう協りょk)
(それとこれとは話が別だもん)

にべもない。
ユーノの魔法を交えながらの説得は、ここ五時間でまったく進歩がなかった。まるで第一次世界大戦の塹壕戦。
なのはの言うところの危なっかしい宝石、ジュエルシードを集めるには、ユーノだけではあまりにハードルが高すぎた。それはもう嫌と言うほど思い知っている。
だからこそなのはに協力を頼んでいるわけだが、彼は魔法を学ぶにしても危険なことはごめんだと譲らない。話は平行線をたどり、時間は無為に過ぎていった。

(ところでなのは、授業は受けなくていいの?)

とりあえずユーノは話題を変える。
ありとあらゆる側面から攻めてみれば、いつかは折れてくれるかも知れない。そんな淡い期待を抱きながら。

(んー、一日ぐらい受けなくても大丈夫だよ)

なのはは穏やかに、しかし確固たる自信を感じさせる穏やかな口調で言った。
朝から五時間、ユーノの話を聞き続けていたとは思えない態度だ。

(一日ぐらいって……なのはちゃ)
(なのは”君”。じゃなかった呼び捨てでいいから。間違えないでね?)

なのはが底冷えするような思念を送りつけ、ユーノの言葉が中断させられた。
ちゃんと、君。小学三年生なら性別に関係なくどちらでも使えはしたが、なのはにとってはかなり深刻な問題だ。
これを無視したら本気でヤられる。ユーノの頭の中に、ボロ屑のように転がるフェレットの死体の映像がかすめた。
しかし君付けするとどうも違和感をぬぐえないので、後者を選択することにする。

(な、なのははそんなに成績がいいの?)
(英語と算数は自信あるけど、それ以外は逆だよ)
(逆?)
(成績が悪くてどうしようもないから、一日くらいさぼっても大して変わらないってこと)
(そ、そうなんだ)

なのはの評価から頭がいいという記述を削除しようかと、ユーノは思い悩む。
すると二人の会話に、空気の振動による声が割り込んできた。

「なのは君、ちょっとこの英文読んでくれるかな?」
「あ、はい」

女性の先生だった。三学年の先生は社会と英語が女性なのだ。
二人ともなかなかの美人で性格も良く、生徒からの人気は高かった。
もちろん二人とも無闇に優しい態度は取らず、場合場合で厳しい態度で望む。
しかし、明らかに授業を聞いておらずぼーっとしていたなのはに対して、その先生はごく普通の口調だった。
なのははががっと音を立てながら立ち上がり、黒板に書かれた英文を読み始めた。

「Turn down the radio a little.It's too noisy」
「はい。ありがとう」

いえ、となのはは小さく頭を下げ、再び腰を下ろした。
「今の例文は少し難しかったかな? Turn downという慣用表現がある、ということを分かってくれればいいわ。慣用表現というのは普通の文法とは少し違った使い方のことで……」と続けていく声が、なのはの意識から再び遠ざかる。

(す、凄いんだね、なのは)
(英語と算数だけは、ね)

あまり興味がないように答える。実際、あまり凄いとは思っていないのかもしれなかった。
そこでユーノはひらめく。そういえば、ミットチルダ式の魔法も英語とほぼ同じ言語を使うじゃないか!

(実はね、なのは。僕たちが使う魔法は英語に凄くよく似た言語を使うんだ)
(そういえば……そうだったね)
(だから頑張れば、なのははすぐに)
(危ないことはしないよ?)
(……うん)

撃沈。






****************************






授業が終わり、帰りの会も終わった。クラス担任の先生にお辞儀をするやいなや、なのはは一気に教室からの離脱を計る。
この年の子供は、特に女の子はおしゃべりが好きだ。そのために学校に来ているといっても過言ではない生徒も少なくない。
なのはも会話は好きな方だったが、それよりも優先したい趣味がいくつかあった。
女の子……特にあの二人に捕まると、時間は一瞬で過ぎてしまう。それはなのは自身が楽しんでいる証拠でもあったが、家に帰ったあとで時間の無さを嘆くことは避けたかった。
それに昨日の今日である。色々と突っ込まれるとまずいことも少なくない。

(二人には悪いけど、今日は……っ!)

直後、なのはの肩に手がかかった。

(早いっ!?)

放課後突入から僅かコンマ五秒。
しかしまだ、気付かなかったことにして無理矢理突破することも可能だった。なのはは再び足に力を込める。

「ねえねえなのは、昨日の話どう思う?」

しかし無情にも、目の前に立ちはだかる笑顔のアリサ・バニングス。
予測を遙かに上回る、僅か二秒での拘束完了だった。

「……昨日って?」

もう逃げ場はない。なのはは観念した。

「ほら、あれよあれ。破壊魔よ」
「凄い数の電信柱が倒されたり、壁が壊されたりしたんだって。道も所々穴だらけで、今日バスが無かったのもそのせいみたいだよ」
「へ、へぇ」

二人が持ちかけてきた話題はもちろん、昨晩の破壊魔のことだ。
分かっていた。この話題が出ることは。だからこそ逃亡しようとしたのに。
内心焦りまくりながら適当に相槌を打つ。とにかくボロを出さないことに全神経を集中した。

「どう考えても人間業じゃないわよね。まるでおっきな怪獣がやったみたいな……」
「ぶっ!」
「きゃあ! ちょっとなにすんのよなのは、汚いわね!」
「ご、ごめん」

いきなり核心だ。誤魔化す暇もない。
それでもなのははあの黒い獣を悟られないように、必死に話題を誘導していく。

「と、トラックでも使ったんじゃないかな?」
「トラックかぁ」
「でもそれだったら道路は傷付かないよ。もっと重い何かだとおもう」
「でもそんなに重いんだったらかなりの大きさが必要になるし、それだったらあんな狭い道通れないわよ」
「だよね。となると……加速度、か」
「運動エネルギーを上げるにはそれしかないわね。道路をへこませるんだから、上から下へ落ちたって考えるのが自然よね」

小学三年生で運動エネルギーとか考える時点でどう考えても自然じゃなかったが、なのはの内心など知らずに二人は的確な推理を続ける。

「連続で落下しながら動く方法……ジャンプ?」
「多分それね。相当な重さの何かがゴムマリみたいに跳ね回ったんでしょう。でもそんなことが出来る機械って何かあった?」
「多分ないと思う」
「となると……あながち怪獣っていうのもありかもしれないわね」
「ま、まさか、そんなことある分けないよ」

なんでこう、私の友達は優秀すぎるのが二人もいるんだろう。
ちょっとした情報と街の惨状だけでここまで推理を進めるなんて、年齢を疑ってしまう。
なんとかして話題を逸らさなければ。
なのはの高度な頭脳はそのことのみに集中運用された。

「そういえばさ、あのフェレット、昨日私の家に来たんだよね」
「え?」
「それ、ほんとなの?」

よし、食いついた。
釣り人のような喜びを感じながらリールを巻く。

「うん。夜になんか窓がうるさいなぁって思ってたら、窓をかりかりひっかいてたの。中に入りたいみたいだったから部屋に入れたら、なんかそのまま懐いちゃって……」
「なんだ、あの後なのはの家に行ったんだ。病院が壊されたって聞いて心配だったけど、それなら大丈夫か」
「それにしてもなのはちゃん、どうして引き取ったの? 動物、キライだって言ってなかったっけ?」
「え、あの……ほら、アリサちゃんの家もすずかちゃんの家も、もう動物飼ってるじゃない? あれ以上はきついかなって思って」
「ふーん。珍しいね、なのはがそうやって自分から苦労を買ってでるの」

なかなか厳しい意見だった。といっても常日頃の行いの結果で自業自得だ。
委員を決めるときもなのはは手を挙げず、結局余った飼育係に回されそうになるとその話術を駆使して他の生徒に肩代わりさせている。
曰く「動物がトラウマ」
曰く「アレルギーっぽいものがあったりなかったり」
曰く「世界の意志が私に飼育係をするなと叫んでる」等々。

「ふ、普段から二人にはお世話になってるし、これくらいはと思って。それにお母さんもお姉ちゃんも動物飼いたがってたし」
「……ふ~ん」

納得していないという顔のアリサとすずか。流石に親友を自負するだけあってなのはの性格は非常に良く把握している。
なのはは冷や汗をかきながらいつもの対処法を行うことにした。

「そ、そうだ! 私あの子に名前付けたんだよ」
「え? なになに!?」
「教えて~」

必殺、話題そらし。いくら大人びいているとは言え所詮小学三年生、面白そうな話題に流れていくのは無理もない。
しかしこの技の発動には女の子の思考を読み、彼女たちが喜びそうなネタを判断する必要があるため難易度は高い。おまけに成功しても、自分が女の子みたいだと認めることになる、なのはにとっては諸刃の剣である。
しかしなのはにとっては昨日の事件の隠蔽の方が重要だった。
なにせ変身したのは魔法”少女”だ。
まかり間違ってそこまで真実にたどり着いてしまった場合。考えるだけでも恐ろしかった。

「ユーノ君っていうんだ」
「へぇ、なのはにしては普通のネーミングじゃない」
「は、はは、そうかな」

本人が名乗ったんだからねと心中で呟く。
そしてなのははこれ以上、この話を二人としたくなかった。
タイミング的にこれが最後のチャンスだろう。これを逃せば放課後、バニングス家所有のリムジンにいつの間にか乗せられて、真っ暗になってから家に付くことになる。嫌と言うほど経験したパターンだった。
いつでもなのはと話したがる二人のこと、本当に問題のないタイミングなど存在しないのだが、なのはは勇気を出して切り出した。

「ところで私、これから用事があるんだけど……帰って良いかな?」

とたんにアリサが不機嫌な顔。どう見ても素直に認める気はない表情だ。

「用事? なにそれ」
「そ、それは……」

まさか昨日の件についてボロを出したくないから帰る、なんて言えるはずもない。
なのははしばらく思考を巡らせて、必死に急造した言い訳を聞かせた。

「プログラム、とか……」

ダンッ!!

「ひぃっ!!?」

アリサの身体能力が惜しげもなく発揮され、両手を叩きつけられた机は、ほぼ鉄製なのにも関わらずきしみを上げる。
なのはが恐る恐るアリサの顔を見ると、その表情は穏やかな微笑みそのものだ。
そしてその裏には般若の面が浮かんでいることも、嫌と言うほどよく分かった。

「なのは」
「は、はい?」
「可愛い女の子との楽しい楽しい会話と、延々画面に向かい続けてかちゃかちゃキーボードを打つ作業、どっちが楽しいと思う?」
「そ、それは……」
「どっちが楽しいと思う?」
「あ、あのね? プログラムっていうのも結構奥が深くt」
「どっち?」
「……お話しさせて頂きます」

なんかもう、どうしようもない力関係が悲しかった。

「ところでさ、なのは」
「え? なに、アリサちゃん?」
「え、えと……」

数秒前とはうってかわってしおらしい態度を取るアリサ。
顔を俯かせ、手を組んだり解いたりし、挙動がそわそわ落ち着かない。

「今度の水曜日ね? 私予定が空いてて……それで面白そうな映画があったりなかったりするんだけど……」
「?」
「えっと、その……だから……」
「アリサちゃん、こっち! ……なのはちゃん、ちょっと待っててね」

なかなか話を切り出せないアリサにすずかが助け船を出す。
ちょいちょいと服の裾を引っ張って、なのはに背を向けて二人でこそこそ話を始めた。

「ほら、もうちょっとだよ!」
「で、でも……」
「もう。さっきはあんなに強くなのはちゃんを引き留めたでしょ?」
「それとこれとは話が別で……その……」
「いいからほら。映画一緒に見に行かない? って言えばいいだけなんだから。はい、深呼吸。スー、ハー。スー、ハー」
「……うん。ありがと、すずか」

そしてアリサはなのはに向き直る。

「なのは!」
「は、はい!」
「わ、私と……」


アリサはごくりと唾を飲み込み、



「私と映g(なのは、大変だ!!!)」



なのはは絶妙なタイミングで、アリサの言葉を聞き逃した。




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