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魔法少年ロジカルなのは2-3(後)

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「ん~、ここのパフェはやっぱり絶品だよね♪」
「いつもいつもこれ以上ないほど美味しそうに食べるわね、あんたは」
「でもやっぱり美味しいものは美味しいから。今度レシピ教えてもらおうかな」
「その発想はなかったわ」

アリサは苦笑した。女の子と一緒にカフェに来て、パフェ(それもスペシャルサイズ)を幸せそうに頬張るなんて、やっぱりなのはには男っぽくなる意志がないんだと思う。もしくは心の中で思っていても、身体は無意識に正反対の行動を取るとか、そんなタイプか。
それはそれで面白いと思った。肘をテーブルについて手をつっかえ棒にしながら、どんどんパフェを減らしていくなのはを見つめる。

「それでアリサちゃん、次どこに行くか決めるんじゃなかったっけ」
「ああ、うん」

パフェをあらかた食べ終えて、生クリームを口周りに付けたなのはが訪ねた。
ココアを飲みながら少し考える。別にこれと言って行きたい場所はなかった。ありきたりだが、なのはと一緒にいればどこに行っても楽しいのだ。もちろんそんな恥ずかしいことは死んでも口に出せないので、理由としては使えない。
じゃあ何か適当なところを……
そこまで悩んでいたアリサを見て、なのはは何を勘違いしたのか、

「思いつかないなら別に無理しなくても……」

別に無理なんてしてない! 私はなのはと一緒いたいだけなの!!
怒鳴りかけたアリサは寸前でその言葉を飲み込んで、いつも通りの口調で言った。

「うるさいわね。ちょっと待ってなさい!」
「は、はい!!」

背筋をびしっと伸ばしたなのはは、本当にアリサが何か言うまで待っているようだ。
そうしていろと言ったのは自分だが、望んでいることとはほど遠い。

「……ふつーこんな時は男のあんたが考えるものだっつーの……」

なのはでも聞き取れないほどの小さな声でぼやいたその言葉が、アリサの本心だった。
それにしても行きたい場所が出てこない。ないわけではないのだが、どれもこれもぱっとしなかった。
こんなに自分のレパートリーは狭かったかと驚く。アリサは小学三年生、交遊範囲が狭くても仕方がなかった。映画、カフェ、いくつかのブティック、ゲームセンター、これだけでも歳を考えれば広すぎるほどだ。
しかしアリサは妥協をしない性格だった。どうせ出かけるならばと必死に頭の中の地理情報に検索をかける。

そんなことをしている間、アリサの視界に琥珀色が揺れた。入って何も頼まないのは失礼だからと、適当に選んだ紅茶である。
再び表面が揺れた。今度は供えられたスプーンがかちゃかちゃと音を立てた。
間髪おかず三度目。今度は店全体がかちゃかちゃと震えた。

「揺れてる?」

アリサの疑問をなのはが代弁した次の瞬間、桁違いの震動が襲った。

ガシャアアン!!

大音量と共に店の窓ガラスという窓ガラスが粉砕する。一面ガラス張りのそばにいたのが災いし、破片は二人への直撃コースをとった。

「きゃっ!?」
「アリサちゃん!!」

アリサが腕で顔を守る。あまりに心許ない防御だった。なのはは運動神経を限界まで酷使して、畳返しの要領でテーブルを返す。と同時にアリサの手を掴んで無理矢理引き寄せ、抱きしめる。アリサの身体がテーブルとなのは自身の身体に覆われたところで、鋭利な刃の化したガラスが降り注いだ。
雨はすぐ止む。

「アリサちゃん、大丈夫?」
「……なのは? あ、ありがと……」

アリサはバクバクと脈打つ心臓を感じながら、なのはに礼を言った。鼓動が高まった原因は突然の事故によるのか、それとも現在進行形で続いているなのはの守護に寄るものか。
悩むアリサに比べて、なのはの興味はアリサの無事を確認した時点で別のものに移っていた。

「それにしてもなに、地震?」
(地震? ううん、違う。そんな持続的な物じゃなくて、もっと爆発的なこの感覚は……)
「ジュエルシード……!」

ガラスが割れて直接見えるようになった外では、人々の混乱の声を見下すように巨大な何かがそびえ立っていた。
コンクリートを突き破って張っている根を見て、それが樹木だと分かった。あまりに桁違いのサイズだが、ジュエルシードの仕業と考えれば可能性は限りなく高い。

「な、なんなのよあれ! う、うそ、木なの!!?」

だからジュエルシードの存在を知らないアリサの驚き具合は、なのはのそれの比ではなかった。
なのはとて今までの暴走体とは格の違う力に驚いているくらいなのだ。とは言え、暴走体が弱かろうが強かろうが、なのはのすることに変わりはない。

「アリサちゃん、早くここから逃げよう!」

そう。逃走だ。

「言われるまでもな……あ、あんた、ひどい怪我してるじゃない!」
「え?」

言われて始めて指の怪我に気付いた。さっきガラスを防御したとき、テーブルを支えていた指だけが傷を負ったのだ。見れば人差し指と中指の、第一関節から第二関節にかけてがザックリさけていた。見かけより傷は深い。血は止めどなく流れ続けていた。

「あ、ほんとだ……」
「なにそんな悠長なこと言ってるのよ! ほら、ハンカチ巻いてあげるからじっとして!!」
「でも血で汚れ」
「んなことどうでもいい!!」

宣言通りアリサは血で汚れることもいとわずに、なのはの指二つにきつくハンカチを巻き付け始めた。
そこでなのはの頭に声が割り込んでくる。もう何度も経験しているのですぐに分った。念話だ。

(なのは!)
(ユーノ君? 一体これ、どういうことなの!?)
(ジュエルシードが発動した!)

なのはは舌打ちした。

(そんなのは分かってる! でもジュエルシードってこんなに凄い力があったの!?)
(今までは暴走の媒体が残留思念だったり動物だったりで力が十分に発揮されなかったんだ! 多分今回は人が、それもかなり強い思いが媒体になってる)

強い思いという単語を聞いた瞬間、とあるワンシーンが記憶の海を浮き上がってきた。
サッカーでシュートが入ったときの、あの妙な感覚……

(まさかあの時……)
(それより大変なんだ!)

なのはは次に来る台詞に先回りして断言する。

(また手伝えって? もう嫌だよ。今度こそ危ない。私はアリサちゃんと一緒に避難してるから、後は一人で頑張っ)
(待ってくれなのは!)

今度のユーノは雰囲気が違った。精一杯シリアスモードを全開にして語りかけてくる。

(すずかちゃんも巻き込まれてるんだ!)
(なっ……!)

また自分を巻き込むためのユーノの罠かと思ったが、それはすぐになのは自身によって否定された。ユーノを預けたのはすずかだ。あれだけの量の麻酔薬から、ユーノが早々復活するとも思えない。
結論。

すずかが危険な状態にあるのは、真実。

(君は何をしてたの!?)
(ごめん、いきなりで対処のしようがなかった)
(言い訳なんて聞きたくないっ!!)
(……今は結界を張って何とか保たせてる。けど外からの圧力が物凄いんだ、このままじゃ……)

どうなるか、なんて聞きたくなかった。

(逃げられないの!?)
(車に乗ってたところを巻き込まれたから閉じこめられて……)
(くっ!!)

どうする? アリサを安全なところまで連れて行き、すずかを見捨てるのか。
『安全ではない』と『非常に危険』。冷静に考えれば答えは自ずと出てきた。

(……絶対に保たせて!!!)
(なるべくがんばってみ)

そこで念話が切れた。まずい。時間は差し迫っている。
まさかあの時見逃したジュエルシードがこんなところで鎌首をもたげてくるとは。なのはは己の不覚さを呪った。呪いながらも、行動は止めなかった。
ポケットの中からレイジングハートを取り出す。昨日の夜から入れっぱなしにして置いたのだ。不幸中の幸いだった。

「なのは、もう巻き終わったわ! ぼーっとしていないで逃げるわよ!」

気付けば指にはアリサのハンカチが二つにちぎられて結ばれており、出血の勢いはほとんどなくなっていた。
感謝の気持ちと共に、これから告げなければいけないことへの罪悪感がなのはの心を締め付ける。それでもなのははその一言を口にした。

「……アリサちゃん、一人で逃げて」

アリサが次の言葉を発するまで三秒かかった。言葉が飲み込めず意味を理解するのに一秒。なのはが一人で何かしようとしているところまで読みとるのに一秒。怒りが沸点に達するまで一秒の割り当てだ。

「はぁ!? なにとち狂ったこと言ってるのよなのは、一緒に逃げよう!?」
「だめなの。私は行かないと」
「どうしてなのはが!? あんなのは自衛隊に任せておけばいいでしょ!!」

理由を言えばアリサは納得してくれるだろうか。あの木の中にすずかが捕らえられ、それを助けにいける力が自分にあるということを。
恐らく、納得した上で付いてこようとするだろう。それだけはだめだ。

「……ついてこないで」
「あっ!」

故意に冷たく言い捨てて、なのはは走った。アリサも体育の成績は優秀だが、本気を出したなのはは早かった。すぐにどうしようもないほどの距離が二人の間に空く。
背中は遠かった。アリサが精一杯伸ばした手は、まるで無意味だった。

「なのは……どこに行くのよ……」

呟く。叫びながら呟く。
怖くはない、のはうそだけど、逃げることくらい一人でもできる。それでも、行かないでと。
置いて行かれる気がするのだ。なのはが、自分を置いてどこか遠くへ行こうとしている気がする。

「なのはぁ!!!」

ポケットの中の宝石が、青い光を放った。
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